翡翠という名前の宝石を聞いたことがある人は多いかもしれませんが、実際に見たりその性質をスラスラ言えるという人は意外と少ないのではないかと思います。
ヒスイは日本とも関わりの深い鉱石の1つで、エメラルドと並んで5月の宝石になっているなど人気も高いです。
この記事では、そんな翡翠の宝石としての性質から、パワーストーンとしての暗示や石言葉などについて書いていきたいと思います。
翡翠の基本データ
鉱物名 (英語) | 翡翠 (Jade、ジェイド) |
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別名、略称 | 無し |
主な産地 | ミャンマー、グアテマラ、アメリカ、日本など |
主な色 | 主に緑だが、様々 |
構造 | 単斜結晶 |
硬度 | 6~7 |
比重 | 3.2 ~ 3.2 |
屈折率 | 1..66 ~ 1.68 |
光沢 | ガラス光沢から脂肪光沢 |
岩石の成分 | ジェダイト:Na(Al, Fe)Si2O6 ネフライト:Ca2(MG,Fe)5(Si8O22)(OH)2 |
翡翠の名前の由来
ヒスイは昔、メノウなどの多くの宝石とともに「玉」と称されてきました。
「翡翠」の字は、もともと「カワセミ」という意味でしたが、ヒスイに見られる緑色と緋色の混ざり具合がカワセミのはねに例えられたことから、次第にヒスイのことを「翡翠」と呼ぶようになったと言われています。
後でも説明しますが、翡翠は総称で、その中には硬玉と呼ばれるものと軟玉と呼ばれるものの2種類があります。一般的に「翡翠」と言われて思い浮かべるのは硬玉の方だと思います。
また、英語では硬玉、軟玉どちらも合わせてJade (ジェイド)と呼び、特に硬玉を Jadeite (ジェダイト)、軟玉をNephrite (ネフライト)と呼びます。
翡翠の性質
翡翠の性質としては、以下のようなものがあります。少し長くなりましたが、翡翠は7大宝石の一つとしても数えられるくらい有名なので知っておきましょう。
- 実は、”翡翠” は2種類の宝石の総称
- 昔は金や銀と同じ価値だった
- 日本とも関わりの深い石
1. 翡翠には軟玉と硬玉がある
翡翠には、軟玉と硬玉があります。
軟玉 (ネフライト)
ネフライトも一般的に単独の鉱物を指すのではなく、頑丈で緻密な塊状で産出したトレモライト (透閃石) とアクチノライト(緑閃石)のことを指しています。
ネフライトは宝石としての価値はありませんが、中国では古代からネフライトを使った宝飾品が多くあり、呪術的な価値などもあって大変重宝されてきました。
そのような経緯もあり、中国国内ではネフライトは宝石並みの価値で取引されることが多いようです。(中国以外では、半貴石という、宝石から1つ格落ちしたランクに属しています。)
硬玉(ジェダイト)
ジェダイトはネフライトよりも色の幅が広く、鉄を含むと緑色、満願と鉄を含むとライラック、そのほかにも内包する鉱物によってピンク、褐色、赤や青、黒、橙、黄色と様々です。
エメラルドグリーンの石はインペリアルジェィドと呼ばれて特に重宝されています。
ミャンマーが主な生産地で、日本でも産出する宝石の一つです。
歴史的には、この軟玉と硬玉は同じものとしてどちらも貴重なものとされてきましたが、学者によって別々のものとわかりました。
そこで、中国からの石をネフライト、中南米の石をジェダイトとしました。
翡翠の軟玉と硬玉は一般の人が見分けるのは大変難しく、腕を磨いた鑑定士でもその判定は困難です。
また、翡翠によく似た宝石もよく出回っているので海外で翡翠を購入する際は特に注意してください。
2. 金や銀と同じ価値を持っていた?
メキシコをはじめとする中央アメリカでは、高級な翡翠が取れることから、翡翠は金よりも価値があるとされ、仮面や神の彫刻、儀式の道具などによく用いられてきました。
また、貴族や皇族などの特権階級のシンボルとしても収集されました。
中国でも、ネフライトが人気を博していて、特に細かな彫刻ができること、硬くて長持ちすることから宝飾品としての価値が高まりました。
中国以外の国では、軟玉(ネフライト)は生活の道具や加工品に使われていました。
例えばニュージーランドのマオリ族では、ネフライトの強靭さに注目して、斧などの刃先として使用されてきました。
地域によってここまで価値が違う宝石は、ネフライトを除いてほかにないかもしれません。
3. 日本とも関わりの深い石
地質学的な関係上、日本では宝石の産出量はそこまで多くはないのですが、その数少ない出土する宝石の一つが、翡翠です。
縄文時代あたりから翡翠のコレクションが始まっていたとされ、貴族や皇族などの特権階級の収集品や、神事のような儀式の際に使用される貴重なものとされてきました。
先史・古代の日本の代表的な装身具の一つとされている勾玉も、この翡翠で作られたものはとりわけ高級なものだったと言います。
日本では新潟県の糸魚川辺りが主な産出地になっています。
翡翠の石言葉
- 長寿・健康
- 徳
翡翠のいちばん一般的なイメージといえば、やはり「不老不死の石」ではないでしょうか?確かに、世界中のどこにおいても死者との交信や病気の治療などに使われてきまいした。
例えば中南米地域の国々では翡翠は腎臓の病に効果があると信じていましたし、それをヨーロッパに持ち帰ったスペイン人もそれは同様でした。ネイティブアメリカンの間でも腎臓病に効果のある石とされていたそうです。
また、中国では翡翠には疲労を予防したり、遺体の腐敗を遅らせる神秘的な力があるとされていて、高い位についていた人が亡くなると「葬服」と呼ばれる翡翠で作った服に身を包まれ、埋葬されました。
このような背景から、翡翠は長寿や健康の石とされてきました。2016年にはヒスイは日本の国石に認定もされていて、健康大国のイメージにもふさわしい石になっています。
またその美しさ、硬さ、高い耐久性から人間の美徳に結びつけられた経緯もあり、徳の石としても知られています。
翡翠のモース硬度は6~7 と一般的な宝石と比べてもそこまで高くはありません(むしろ低め)。しかし、ジェダイトもネフライトも鉱石の内部で結晶同士が絡み合うような構造をしているので、割れにくい性質があります。
こうした性質によって、ヒスイは「粘り強い」と称される強さを持っていて、このために全ての鉱石の中でもっとも硬い(丈夫) とされているのです。
パワーストーンとしての翡翠
パワーストーンとしての翡翠は、以下のようなイメージを持ちます。
- 交通安全
- 商売繁盛
- 不老不死・無病息災
- 災厄を避ける
- 徳を高める
- 人間関係の改善を図る
やはり一般的なのが、「病気を退ける力を持つ」という面です。翡翠の粉は痛み止めにも使われていたり、
また、魔除けの石としても利用されてきたこともあり、こうした「悪いものに抵抗する」の力があるとされてきました。厄災や事故を避けるというイメージもここからきていると思われます。
今でもこうした暗示が強くあり、持っているだけで怪我や天災から身を守ることができたと考える人は多いそうです。
また、途中でも説明しましたが、その硬さと美しさから人の徳を高めたり、人間性を向上させるものとして取り沙汰されてきました。